病気と症状の知識

夏の痛みを防ぐために——冷房冷えと熱中症対策について

2026年 07月 25日

7月下旬から8月にかけて、当院の外来では「夏になって痛みが強くなった」というお悩みを訴える患者さんが増えてきます。夏は一見、痛みが楽になりそうに思えますが、実際は痛み管理が難しい季節です。今回は、夏特有の痛みが増悪する理由と、その対策についてお話しします。

■ 夏の痛みが強くなる理由①:冷房冷え

夏の痛み増悪の最大の原因は、冷房による「冷え」です。

屋外の気温は30℃を超えていても、オフィスや店舗の室内は20℃前後に設定されていることが多くあります。その温度差に、体が対応しようとします。すると、血管が収縮して血流が悪くなり、筋肉が硬くなってしまうんです。

特に肩こりや腰痛のある方は、冷房の風に当たるだけで痛みが急激に悪化することがあります。

「冬は痛いけど、夏は大丈夫だろう」と思っていたのに、逆に悪くなってしまった——そうした患者さんからのご相談は、毎年多くいただきます。

■ 夏の痛みが強くなる理由②:脱水と熱中症

もう一つが、熱中症や脱水との関係です。

熱中症の初期段階では、めまいや頭痛、倦怠感が起こりますが、実は筋痛(筋肉の痛み)や関節痛も伴うことがあります。これは、体が脱水状態にある時、筋肉が適切に機能できなくなるためです。

さらに、脱水が続くと、電解質(カリウム、ナトリウム)のバランスが崩れます。これが、こむら返りや筋肉の痙攣を引き起こします。

スポーツをされている方はもちろん、デスクワークで室内にいる方でも、気づかないうちに脱水が進んでいることがあります。

■ 夏の痛みが強くなる理由③:姿勢変化

また、夏独特の生活スタイルの変化も関わってきます。

冷房で冷えた室内では、無意識に姿勢が丸くなってしまいます。体が冷えると、防衛反応として筋肉が緊張し、肩を縮こませるような姿勢になってしまうんです。この姿勢が続くと、首や肩、腰の痛みが増悪します。

さらに、夏は薄着になるため、体温調整が難しくなり、体がより一層冷えやすくなります。

■ 対策①:こまめな保温と温浴

冷房対策の基本は、「こまめな保温」です。

- オフィスではカーディガンやショール、膝掛けを常備する
- 冷たい風が直接当たる席は避ける
- 冷房の温度設定に気を付け、屋内外の温度差を小さくするよう工夫する

また、帰宅後は温浴(ぬるめのお風呂に15~20分)が効果的です。血流を改善し、筋肉の緊張をほぐしてくれます。

冷房で冷えた体を、しっかり温め直すことが、翌日の痛みを予防するコツです。

■ 対策②:こまめな水分補給と適切な栄養

熱中症や脱水の予防には、こまめな水分補給が不可欠です。

- 朝起きた時、仕事の合間、就寝前など、意識的に水分を摂る
- 水だけでなく、電解質(ナトリウム、カリウム)を含むスポーツドリンクや経口補水液も活用する
- 甘い清涼飲料水は避け、水やお茶、経口補水液などを選ぶ

また、「痛みが強い時期は栄養をしっかり摂る」というのも、意外と重要です。特にタンパク質と、ビタミンB群(豚肉、魚、卵、豆類など)を意識的に摂ることで、筋肉の回復が早まります。

■ 対策③:軽い運動とストレッチ

運動不足も、夏の痛み増悪の一因です。

冷房が効いた室内で過ごす時間が長いと、知らないうちに活動量が低下しています。これが筋力低下につながり、痛みが悪化する悪循環に陥ってしまいます。

対策としては、以下のようなことが効果的です。

- 毎日少しの時間でも、ストレッチを習慣化する
- 屋内にいるときも、時々立ち上がって体を動かす
- 朝や夕方の比較的涼しい時間に、軽いウォーキングをする

当院で指導している「自宅でできるリハビリ体操」(ブログの過去記事でご紹介しています)も、こうした時期に特に役立ちます。

■ 対策④:当院での治療を上手に活用する

冷房冷えによる筋肉の硬さや血流不全は、エコーで明確に確認できます。

当院では、以下のような治療を提案させていただくことがあります。

- 体外衝撃波療法:血流を改善し、硬くなった筋肉や腱をほぐすのに有効です
- 手技療法(マッサージ・関節モビライゼーション):冷房で縮こまった筋肉を直接ほぐします
- 神経ブロック注射:痛みが強い時期に、痛みをコントロールしながら、早期にリハビリを開始できます

「最近、夏になって痛みが増えた」という方は、ぜひ一度ご相談ください。エコーで現在の状態を確認し、その患者さんに最適な治療方法を一緒に考えていきます。

■ 最後に——予防が一番大事

医師として、つねに思うことがあります。それは、「痛みが出てから治療するより、痛みが出ないように予防する方が、はるかに効率的だ」ということです。

夏の痛み対策も同じです。気温が上がり始める6月のうちから、冷房対策と栄養、運動の習慣を意識しておくことで、本格的な夏を迎えてからの痛み悪化を防ぐことができます。

「毎年、夏は痛くなる」と諦めていた方も、今年の夏は違う過ごし方ができるかもしれません。

当院は、皆さんの「予防」をサポートします。困ったときはもちろん、困る前のご相談も、いつでもお気軽にどうぞ。

この記事の執筆・監修

著者のプロフィール画像

寺田 哲Satoshi Terada

InstagramFacebookNote

医師/麻酔科専門医・ペインクリニック専門医

「痛み痺れを諦めない」をモットーに、日々診療にあたっています。最新のエコーガイド下治療やVR治療など、医学の力で患者さんの日常を取り戻すためのヒントと、日々の学びを綴ります。

略歴・資格

  • 2008年 埼玉医療センター麻酔科
  • 2014年 NTT東日本関東病院 ペインクリニック科
  • 2016年 静清リハビリテーション病院
  • 2019年 三島総合病院 ペインクリニック科 医長
  • ペインクリニック専門医 / 厚生労働省 麻酔科標榜医 / 健康スポーツ医

専門・研究

超音波ガイド下治療やVR治療の最前線で活動し、多くの学会(日本整形超音波学会、日本ペインクリニック学会、日本VR医学会等)でシンポジストや基調講演を務める。

最新記事