第7章 それでも、来てくれる患者さんがいる

ここまで、医療現場の疲弊について書いてきました。

無断キャンセル。暴言。レビュー。理不尽な要求。「患者様」という空気。そして、少しずつ疲弊し、萎縮していく現場。

ですが、現場はそれだけでできているわけではありません。むしろ私たちは、ほんの小さな一言に救われながら、毎日働いています。

「先生のおかげで歩けました」「痛みが減りました」「話を聞いてもらえて安心しました」

そう言われる瞬間、医療者は、また次の日も頑張ろうと思える。

■ 医療は患者さんとの共同作業

実際、医療というのは、医師だけで成立するものではありません。患者さん側の協力が、とても重要です。

時間通り来てくれる。薬をきちんと飲む。生活改善へ取り組む。分からないことを、きちんと質問してくれる。無理な要求ではなく、一緒に治療方針を考えてくれる。

そういう関係性がある時、医療は驚くほどスムーズに進みます。

私は良い医療というのは、「治してもらう場所」ではなく、"一緒に治していく場所"なのではないかと思います。

■ 限界を「共有」として受け止めてもらえる時

もちろん、医療には限界があります。痛みをゼロにできないこともある。希望通りにいかないこともある。副作用が出ることもある。

ですが、互いに信頼関係がある時、患者さんは、その説明を"拒絶"ではなく、"共有"として受け止めてくれる。ここに、医療の本来の姿がある気がするのです。

■ 9割はいい患者さんです

私は、「患者さんが悪い」と言いたいわけではありません。実際には、素晴らしい患者さんも、たくさんいる。むしろ9割はいい患者さんです。

こちらを気遣ってくださる方。「忙しいのにありがとうございます」と言ってくださる方。治療へ真剣に向き合う方。そういう患者さんに、現場は何度も救われています。

■ 「お医者様」でも「患者様」でもない関係へ

昔は「お医者様」。今は「患者様」。しかし本当は、どちらでもない。医師が神でもなければ、患者が王様でもない。同じ病気や痛みに向き合う、人間同士です。

相手を、サービス提供者として消費しないこと。相手を、"採点対象"として見ないこと。互いに、限界のある人間として尊重すること。

その上で、一緒に病気へ向き合っていく。

それが、「お医者様」でも、「患者様」でもない、これからの医療の形なのかもしれません。

この記事の執筆・監修

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寺田 哲Satoshi Terada

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医師/麻酔科専門医・ペインクリニック専門医

「痛み痺れを諦めない」をモットーに、日々診療にあたっています。最新のエコーガイド下治療やVR治療など、医学の力で患者さんの日常を取り戻すためのヒントと、日々の学びを綴ります。

略歴・資格

  • 2008年 埼玉医療センター麻酔科
  • 2014年 NTT東日本関東病院 ペインクリニック科
  • 2016年 静清リハビリテーション病院
  • 2019年 三島総合病院 ペインクリニック科 医長
  • ペインクリニック専門医 / 厚生労働省 麻酔科標榜医 / 健康スポーツ医

専門・研究

超音波ガイド下治療やVR治療の最前線で活動し、多くの学会(日本整形超音波学会、日本ペインクリニック学会、日本VR医学会等)でシンポジストや基調講演を務める。

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