ここまで、医療現場の疲弊について書いてきました。
無断キャンセル。暴言。レビュー。理不尽な要求。「患者様」という空気。そして、少しずつ疲弊し、萎縮していく現場。
ですが、現場はそれだけでできているわけではありません。むしろ私たちは、ほんの小さな一言に救われながら、毎日働いています。
「先生のおかげで歩けました」「痛みが減りました」「話を聞いてもらえて安心しました」
そう言われる瞬間、医療者は、また次の日も頑張ろうと思える。
■ 医療は患者さんとの共同作業
実際、医療というのは、医師だけで成立するものではありません。患者さん側の協力が、とても重要です。
時間通り来てくれる。薬をきちんと飲む。生活改善へ取り組む。分からないことを、きちんと質問してくれる。無理な要求ではなく、一緒に治療方針を考えてくれる。
そういう関係性がある時、医療は驚くほどスムーズに進みます。
私は良い医療というのは、「治してもらう場所」ではなく、"一緒に治していく場所"なのではないかと思います。
■ 限界を「共有」として受け止めてもらえる時
もちろん、医療には限界があります。痛みをゼロにできないこともある。希望通りにいかないこともある。副作用が出ることもある。
ですが、互いに信頼関係がある時、患者さんは、その説明を"拒絶"ではなく、"共有"として受け止めてくれる。ここに、医療の本来の姿がある気がするのです。
■ 9割はいい患者さんです
私は、「患者さんが悪い」と言いたいわけではありません。実際には、素晴らしい患者さんも、たくさんいる。むしろ9割はいい患者さんです。
こちらを気遣ってくださる方。「忙しいのにありがとうございます」と言ってくださる方。治療へ真剣に向き合う方。そういう患者さんに、現場は何度も救われています。
■ 「お医者様」でも「患者様」でもない関係へ
昔は「お医者様」。今は「患者様」。しかし本当は、どちらでもない。医師が神でもなければ、患者が王様でもない。同じ病気や痛みに向き合う、人間同士です。
相手を、サービス提供者として消費しないこと。相手を、"採点対象"として見ないこと。互いに、限界のある人間として尊重すること。
その上で、一緒に病気へ向き合っていく。
それが、「お医者様」でも、「患者様」でもない、これからの医療の形なのかもしれません。

