指・肩・膝の長引く痛み、 「異常な血管」が原因かもしれません

2026年 06月 16日

指・肩・膝の長引く痛み、「異常な血管」が原因かもしれません

「ヘバーデン結節で指の関節が腫れて、ずっと痛い」

「五十肩が半年以上続いている」

「膝の痛みが薬でもなかなか取れない」

こういった慢性の痛みに、実は「異常な血管(モヤモヤ血管)」が深く関わっていることが、近年の研究でわかってきています。

今回は、当院でも行っているオクノクリニック提携の「動注療法(動脈注射)」についてお話しします。

■ 「モヤモヤ血管」とは何か

関節や腱に慢性的な炎症が起きると、体はその部位を修復しようとして新しい血管を増やします。

しかしこの新生血管は正常な血管と違い、細くていびつな形をしています。血管造影で見るとモヤがかかったように見えることから「モヤモヤ血管」と呼ばれています。

さらに問題なのは、このモヤモヤ血管の周囲には異常な神経も一緒に増殖することです。この神経が過剰に痛み信号を発し続けることで、慢性的な痛みが生じます。

また、40歳を超えるとモヤモヤ血管を体が自然に減らす力が弱まるため、一度できた異常血管がなかなか消えなくなります。「年をとると痛みが長引く」理由のひとつです。

■ 動注療法(動脈注射)とは

動注療法は、手首の動脈に点滴で使うような極めて細いチューブ(針)を刺し、そこから薬液(イミペネム・シラスタチン)を直接注入する治療です。

この薬液は抗生物質からできた微細な粒子で、異常なモヤモヤ血管だけを選択的に詰まらせるという特性があります。正常な血管は自分で拡張して詰まりを解消しますが、異常なモヤモヤ血管は拡張できないため、詰まったままになります。

血管が詰まることで、一緒に増えていた異常な神経も徐々に減り、痛みが和らいでいきます。

■ 処置はこんな流れです

処置は外来で行い、所要時間は5〜10分ほどです。

手首の動脈に細い針を刺して薬液を注入するだけなので、手術のような大きな傷跡はありません。処置後はすぐに帰宅でき、当日からシャワーや入浴も可能です。

基本的に1〜2回の処置で完結することが多く、効果は一時的なものではなく治癒に向かうケースが8割以上と報告されています。

■ これまでの治療との違い

ハイドロリリースや神経ブロックが「ファシアや神経に直接アプローチする」治療であるのに対して、動注療法は「痛みの原因となっている異常血管そのものを消す」アプローチです。

ステロイド注射のように腱や組織にダメージを与える副作用がなく、繰り返しても組織が傷まないのも特徴のひとつです。

■ こんな症状・疾患が対象になります

・ヘバーデン結節(指の第1関節の腫れ・痛み)

・母指CM関節症(親指の付け根の痛み)

・五十肩(肩関節周囲炎)

・変形性膝関節症

・足底腱膜炎・アキレス腱炎・テニス肘など腱付着部炎

特に、指の関節痛(ヘバーデン結節・CM関節症)は他の治療では選択肢が少ない部位で、動注療法が有効なケースが多い印象があります。

当院はオクノクリニックと提携して動注療法を行っています。

「他の治療を試したが改善しない」「手術は避けたい」という方、ぜひ一度ご相談ください。

【参考文献】

1. Inui S, Yoshizawa S, Okuno Y, et al. Intra-arterial infusion of imipenem/cilastatin sodium through a needle inserted into the radial artery as a new treatment for refractory trapeziometacarpal osteoarthritis. J Vasc Interv Radiol. 2021;32(9):1341–1347. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34242776/

2. Kubo T, Miyazaki K, Okuno Y, et al. Intra-arterial injection of temporary embolic material through a needle inserted into the radial or ulnar artery for DIP/PIP joint osteoarthritis: a retrospective study of 92 patients. Cardiovasc Intervent Radiol. 2023;46(10):1375–1382. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37524895/

3. Shibuya M, Sugihara E, Okuno Y, et al. Effectiveness and safety of intra-arterial imipenem/cilastatin sodium infusion for patients with hand osteoarthritis–related interphalangeal joint pain. J Vasc Interv Radiol. 2023. https://www.jvir.org/article/S1051-0443(23)00410-4/abstract

4. みしま痛み&リハビリクリニック 動注療法(動脈注射)治療ページ https://mishima-itami.com/treatments/intra-arterial

この記事の執筆・監修

著者のプロフィール画像

寺田 哲Satoshi Terada

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医師/麻酔科専門医・ペインクリニック専門医

「痛み痺れを諦めない」をモットーに、日々診療にあたっています。最新のエコーガイド下治療やVR治療など、医学の力で患者さんの日常を取り戻すためのヒントと、日々の学びを綴ります。

略歴・資格

  • 2008年 埼玉医療センター麻酔科
  • 2014年 NTT東日本関東病院 ペインクリニック科
  • 2016年 静清リハビリテーション病院
  • 2019年 三島総合病院 ペインクリニック科 医長
  • ペインクリニック専門医 / 厚生労働省 麻酔科標榜医 / 健康スポーツ医

専門・研究

超音波ガイド下治療やVR治療の最前線で活動し、多くの学会(日本整形超音波学会、日本ペインクリニック学会、日本VR医学会等)でシンポジストや基調講演を務める。

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