治療の解説

神経障害性疼痛を深掘りする——「ピリピリ・ジンジン」の痛みに、当院が行っていること

2026年 09月 24日

前回、痛みには「侵害受容性疼痛」「神経障害性疼痛」「痛覚変調性疼痛」という3つの原因タイプがあるとご紹介しました。今回は、その中の「神経障害性疼痛」について、もう少し詳しく掘り下げてみたいと思います。

■ 神経障害性疼痛とは、あらためて

神経障害性疼痛は、神経そのものが障害されたり、圧迫されたり、傷ついたりすることで、神経から異常な痛みの信号が発せられてしまうタイプの痛みです。組織の損傷そのものよりも、「神経の伝わり方」に問題が生じている点が、侵害受容性疼痛との大きな違いです。

代表的な疾患としては、坐骨神経痛、三叉神経痛、肋間神経痛、帯状疱疹後神経痛(PHN)、脊柱管狭窄症や椎間板ヘルニアによる足のしびれ・痛み、背骨の手術後も痛みが残ってしまう脊椎手術後疼痛症候群(FBSS)などが挙げられます。「ピリピリ」「ジンジン」「電気が走るような」といった独特の痛み方をすることが多く、飲み薬や湿布だけではコントロールが難しいケースも少なくありません。

■ 武器①:神経ブロック注射

神経ブロック注射は、痛みの原因となっている神経やその周囲に局所麻酔薬を作用させ、痛みの伝達経路を一時的に遮断する治療です。当院では超音波(エコー)で神経や血管の位置を確認しながら行い、部位によってはX線透視や末梢神経刺激装置も併用します。

対象となる部位によって、エビデンスの状況はさまざまです。骨粗しょう症による背骨の骨折が原因の急性腰痛に対する神経根ブロックでは、対照群より痛みが有意に改善したとする無作為化比較試験があります。椎間関節が原因の慢性腰痛に対する椎間関節ブロックも、2年間の追跡調査で有効な管理方法の一つになりうるとされています。星状神経節ブロックについては、糖尿病を伴う顔面神経麻痺の回復を早めたとする無作為化試験や、麻痺側の血流量が有意に増えたとする観察研究があります。一方、三叉神経ブロックや肋間神経ブロックは、比較的小規模な後ろ向き研究や症例集積が中心で、たとえば治りにくい三叉神経痛への末梢枝ブロックでは90例中81.1%で痛みが半分以上改善したという報告がありますが、対象人数の少ない研究である点にはご留意ください。

帯状疱疹後神経痛(PHN)については、少し注意が必要です。発症初期の硬膜外ブロックは、その時点の痛みを1ヶ月程度和らげる効果は確認されていますが、その後のPHNへの移行を防ぐ(予防する)効果は、明確には支持されていません。「今ある痛みを和らげる」ことと「将来の神経痛を予防する」ことは、分けて考える必要があります。

■ 武器②:スーパーライザー(近赤外線治療)

スーパーライザーは、首にある星状神経節へ近赤外線を照射し、針を使わずに交感神経の過剰な緊張を和らげることを目指す治療です。神経障害性疼痛の患者さんを対象とした二重盲検の比較試験では、疼痛や自律神経バランスの指標に良好な変化がみられたとの報告があります。ただし、この分野の研究は現時点では小規模なもの(RCT2件)にとどまっており、国際的な大規模研究(システマティックレビュー・メタ解析)はまだありません。針を使わないため、注射に抵抗のある方の選択肢として位置づけています。

■ 武器③:Raczカテーテル(硬膜外癒着剥離術)

脊柱管狭窄症や椎間板ヘルニア、背骨の手術後(FBSS)などで、硬膜外腔に生じた癒着が神経を締め付けている場合、Raczカテーテルという細い管を使って癒着を物理的に剥がし、薬剤を直接届ける治療を行います。システマティックレビュー・メタ解析では「慢性の難治性腰下肢痛に有効なエビデンスは強く、第一選択治療として考慮しうる」と報告されており、FBSSに対しても通常の硬膜外注射のみの群より2年間の追跡で有意に高い改善率が確認されたとする無作為化比較試験があります。なお、この分野の主要なシステマティックレビューは、本手技の考案者自身が著者に含まれる報告である点も、公平のためお伝えしておきます。

■ 武器④:パルス治療(PRF)

パルス高周波法(PRF)は、42℃以下の温度で神経に電磁場を作用させ、神経を焼くことなく痛みの信号を調整することを目指す治療です。帯状疱疹後神経痛については、複数のランダム化比較試験をまとめたメタ解析で疼痛スコアの有意な改善が報告されています。一方、坐骨神経痛や腰椎神経根痛については、メタ解析レベルの報告はまだなく、平均3〜4ヶ月、8ヶ月までに多くの方で効果が消失したとするデータもあり、長期の持続を前提としない方が安全な治療です。神経根に対する治療は保険診療、末梢神経に対する治療は自由診療(1箇所10,000円)となります。

■ タイプに合わせて、武器を選ぶ

神経障害性疼痛は、痛みの発生源が「神経そのもの」であるため、侵害受容性疼痛とは異なるアプローチが必要になります。今回ご紹介した4つの武器は、それぞれ得意とする部位や病態、エビデンスの強さが異なります。どの治療も効果を保証するものではなく、個人差があります。ピリピリ・ジンジンとした特徴的な痛みが続いている方は、一度診察でご相談ください。

この記事の執筆・監修

著者のプロフィール画像

寺田 哲Satoshi Terada

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医師/麻酔科専門医・ペインクリニック専門医

「痛み痺れを諦めない」をモットーに、日々診療にあたっています。最新のエコーガイド下治療やVR治療など、医学の力で患者さんの日常を取り戻すためのヒントと、日々の学びを綴ります。

略歴・資格

  • 2008年 埼玉医療センター麻酔科
  • 2014年 NTT東日本関東病院 ペインクリニック科
  • 2016年 静清リハビリテーション病院
  • 2019年 三島総合病院 ペインクリニック科 医長
  • ペインクリニック専門医 / 厚生労働省 麻酔科標榜医 / 健康スポーツ医

専門・研究

超音波ガイド下治療やVR治療の最前線で活動し、多くの学会(日本整形超音波学会、日本ペインクリニック学会、日本VR医学会等)でシンポジストや基調講演を務める。

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