治療のこだわり・設備

膝の痛みに新しい選択肢——アキュリアン(膝の末梢神経ラジオ波焼灼療法)とは

2026年 10月 16日

またまた、新しい治療をとりいれました!

末梢神経ラジオ波焼灼療法です

「階段の上り下りで膝が痛む」「歩き始めの一歩がつらい」「ヒアルロン酸注射や飲み薬を続けているのに、痛みが十分に和らがない」——変形性膝関節症の患者さんから、こうしたお悩みを伺う機会は非常に多くあります。今回は、当院で保険診療として行っている新しい痛み治療、アキュリアン(膝の末梢神経ラジオ波焼灼療法)についてご紹介します。

先日、機器をレンタルする形で、当院で初めてこの治療を行ってみました。現在は、膝の変形が進んだ(レントゲンでの重症度分類でグレード3〜4)方のうち、手術を希望されない方を中心にご提案しています。

■ 膝の痛みが起こる仕組み

変形性膝関節症は、加齢や長年の使用によって膝の軟骨がすり減ることで起こる病気です。国内の潜在的な患者数は約2,530万人とされ、女性は男性の約2倍にのぼるという調査報告があります。

初期は立ち上がりや歩き始めに痛む程度でも、進行すると階段の上り下りがつらくなり、日常生活に支障が出てきます。すり減った軟骨が炎症を起こすと、その痛みの信号が神経を通じて脳へ送られ続けます。さらに「痛いから動かない→筋力が落ちる→膝への負担が増える→痛みが強くなる」という悪循環に陥りやすいため、まず痛みをコントロールすることが大切だとされています。

■ アキュリアンとは

アキュリアンは、すり減った軟骨や変形した骨そのものを治す治療ではありません。痛みを伝える神経の働きを一時的に抑える、「除痛」に着目した治療です。

針先から出る高周波(ラジオ波)で、膝の痛みを伝える3本の神経(上外側膝神経・上内側膝神経・下内側膝神経)に熱を加え、神経の働きを一時的に抑えることを目指します。当院では、エコー(超音波)で神経・血管・骨の位置を確認しながら行います。かつてはレントゲンを目安に行われていましたが、エコーを併用することで、神経の位置をより正確に特定でき、治療の確実性や合併症リスクの低減につながると報告されています。

■ 治療の流れ

外来(日帰り)で行え、準備を含めて30〜60分程度が目安です。

  1. 問診・診察で、治療の適応があるかを判断します
  2. 対象となる3か所の神経に少量の麻酔を行う「テストブロック」を実施します。この注射で痛みが半分程度に軽減した方が、本治療の対象となります
  3. 内容と手順を最終確認し、同意をいただきます
  4. 局所麻酔のうえ、エコーで確認しながら針を挿入し、神経ごとに約2分間、一定の温度で熱を加えます(3か所、処置時間は約30分)
  5. 少し休憩し、体調に変化がなければ帰宅となります

■ 期待できること・できないこと

アキュリアンは「魔法の治療」ではありません。正しく理解していただくことが大切です。

期待できること

  • 痛みが半分程度まで軽減する可能性があり、個人差はあるものの、1〜2年程度持続すると報告されています(冷却式の高周波神経焼灼療法を対象とした多施設ランダム化比較試験。当院で使用する機器と同一の研究とは限りません)
  • 痛みが減ることで、歩行や階段の上り下りが楽になることが期待できます
  • 痛み止めの薬の量を減らせる可能性があります

期待できないこと

  • 変形した骨や軟骨を元の状態に戻すことはできません
  • O脚などの脚の変形は治りません
  • 痛みを完全にゼロにすることを保証するものではなく、すべての方に同じ効果が出るわけでもありません

また、神経は時間とともに徐々に再生するとされ、数か月〜数年経つと痛みが戻ってくることがあります。その場合は、医師と相談のうえ、再度同じ治療を受けることや、一定期間を空けて別の治療を検討することも可能です。

■ リスクと副作用

安全性の高い治療とされていますが、医療行為である以上、リスクはゼロではありません。

  • 内出血・腫れ・痛み:処置後に一時的に出ることがあります(通常は数日で治まります)
  • 感覚の変化:まれに膝の皮膚の一部にしびれや違和感が残ることがありますが、多くは時間とともに改善します
  • 感染・アレルギー:非常にまれですが、針穴からの感染や麻酔薬によるアレルギー反応が起こる可能性があります
  • 運動への影響:足を動かす重要な神経は避けて行いますが、まれに一時的な力の入りにくさが生じることがあります

■ 費用について

保険診療で行っています。手技料の目安は15,000点で、自己負担割合により1割15,000円、2割30,000円、3割45,000円です。初診料・再診料・エコー加算などは別途かかります。保険適用は2026年2月26日からで、一定の条件を満たす場合に限られるため、適応と費用は診察の際にご説明します。

■ こんな方はご相談ください

  • 変形性膝関節症と診断されている
  • 飲み薬やヒアルロン酸注射を続けているが、膝の痛みが十分に改善しない
  • 立ち上がりや歩き始め、階段の上り下りで膝が痛む
  • 人工関節手術などは、今のところ希望しない、または受けられない事情がある
  • レントゲンで変形が進んでいる(グレード3〜4)と言われたが、手術はできれば避けたい

治療の適応や、他の治療との組み合わせについても、診察でエコーを使いながら丁寧にご説明します。膝の痛みをあきらめず、まずはお気軽にご相談ください。

この記事の執筆・監修

著者のプロフィール画像

寺田 哲Satoshi Terada

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医師/麻酔科専門医・ペインクリニック専門医

「痛み痺れを諦めない」をモットーに、日々診療にあたっています。最新のエコーガイド下治療やVR治療など、医学の力で患者さんの日常を取り戻すためのヒントと、日々の学びを綴ります。

略歴・資格

  • 2008年 埼玉医療センター麻酔科
  • 2014年 NTT東日本関東病院 ペインクリニック科
  • 2016年 静清リハビリテーション病院
  • 2019年 三島総合病院 ペインクリニック科 医長
  • ペインクリニック専門医 / 厚生労働省 麻酔科標榜医 / 健康スポーツ医

専門・研究

超音波ガイド下治療やVR治療の最前線で活動し、多くの学会(日本整形超音波学会、日本ペインクリニック学会、日本VR医学会等)でシンポジストや基調講演を務める。

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