治療のこだわり・設備

指が引っかかる「ばね指」に、皮膚を切らない選択肢——エコーガイド下腱鞘切開術

2026年 10月 19日

「朝、指がこわばって動かしにくい」「指を曲げ伸ばしすると、付け根で引っかかる」「引っかかったまま、自分では伸ばせないことがある」——こうした症状は「ばね指(弾発指)」かもしれません。今回は、当院で行っている、皮膚を切らないエコーガイド下の腱鞘切開術についてご紹介します。

■ ばね指とは

指を曲げ伸ばしする「腱」と、その通り道である「腱鞘(けんしょう)」がこすれ合って炎症を起こし、指の曲げ伸ばしの際に引っかかりや痛みが出る状態です。デスクワークや家事、スポーツなど、指をよく使う方に起こりやすいとされています。

■ まずは保存療法、それでも続く場合に

治療は、まず安静、装具による固定、消炎鎮痛薬、腱鞘内へのステロイド注射といった保存療法を検討するのが一般的です。ステロイド注射は比較的高い割合で症状の軽減が期待できるとされていますが、効果の持続には個人差があり、繰り返し注射を行うと腱がもろくなるリスクも指摘されています。

保存療法で改善しない場合や、症状を繰り返す場合に選択肢となるのが、腱鞘切開術です。複数のシステマティックレビュー・メタ解析で、手術治療はステロイド注射と比べて治療の失敗が少なく、長期的な有効性に優れるという一貫した結果が報告されています。

■ 当院の「切らない」腱鞘切開術

当院で行っているのは、皮膚を切らない、エコー(超音波)ガイド下の腱鞘切開術です。局所麻酔をしたうえで、エコーで腱鞘の状態を確認しながら専用の針を用いて、狭くなった腱鞘を切開し、腱の通り道を広げることで、引っかかりの解消を目指します。当院では、親指以外の指(人差し指・中指・薬指・小指)で、この方法で行えます。親指のばね指については、他の治療法も含めて、診察でご相談ください。

  • 皮膚を切らない:縫合の必要がなく、傷跡も残りません
  • 日帰りで完結:局所麻酔で行い、入院は不要です。所要時間の目安は約30分です
  • その場で確認できる:局所麻酔下でも指は動かせるため、処置の中で実際に指を曲げ伸ばしし、引っかかりが解消されたかを確認します

なお、腱鞘の切開には、皮膚を小さく切開する方法(開放術)もあります。両者を比較したシステマティックレビュー・メタ解析では、合併症の発生率や再手術の必要性に大きな差はないと報告されています。皮膚を切らない経皮的な方法は、機能回復や日常生活への復帰が早く、鎮痛薬の使用が少ないという報告もあります。

■ 治療の流れ

  1. 診察:症状や指の動きを確認し、適応となるかを判断します
  2. 消毒・局所麻酔
  3. エコーガイド下での腱鞘切開:腱鞘の位置を確認しながら、専用の針で狭くなった腱鞘を切開します
  4. 動作確認:麻酔下で指を実際に動かし、引っかかりが解消されたかを確認します
  5. 処置終了:縫合はせず、針を刺した部分を保護して終了です

■ 治療後の目安

  • 針を刺した部分は、数日間ガーゼ等で保護し、濡らさないようにします
  • シャワーは、当日〜翌日から、患部を避ければ可能な場合が多いです
  • デスクワークなど軽い作業は翌日〜数日で再開できることが多いですが、重いものを持つ作業や、指をよく使うスポーツ・仕事は、数週間程度控えていただく場合があります
  • 麻酔が切れた後に痛みが出ることがあり、その場合は鎮痛薬で対応します
  • 処置当日は麻酔の影響が残るため、車の運転はお控えください

いずれも個人差があり、具体的な経過は診察時に医師からご説明します。

■ リスクと注意点

  • 出血・感染・神経損傷など、針を用いた処置に伴う一般的なリスクがあります
  • 指(特に中指など)によっては、術後に一時的な伸展制限(指がまっすぐ伸ばしにくい状態)が残り、改善までに時間を要する場合があります
  • 腱の通り道を広げる処置のため再発は少ないとされていますが、ゼロではなく、他の指に新たに症状が出ることもあります
  • この方法で行えるのは、親指以外の指です
  • 効果には個人差があり、適応となるかは診察のうえで判断します

■ 費用について

保険診療で行っています。手技料の目安は2,350点で、自己負担割合により1割2,350円、2割4,700円、3割7,050円です。初診料・再診料などは別途かかります。

■ こんな方はご相談ください

  • 指の付け根が痛み、曲げ伸ばしで引っかかる感じがある
  • 朝方に指がこわばって動かしにくい
  • ステロイド注射やリハビリを行っても、症状を繰り返している
  • 指が引っかかったまま、自力で伸ばせないことがある

「手術はちょっと怖い」と感じている方も、皮膚を切らない方法という選択肢があります。まずはお気軽にご相談ください。

この記事の執筆・監修

著者のプロフィール画像

寺田 哲Satoshi Terada

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医師/麻酔科専門医・ペインクリニック専門医

「痛み痺れを諦めない」をモットーに、日々診療にあたっています。最新のエコーガイド下治療やVR治療など、医学の力で患者さんの日常を取り戻すためのヒントと、日々の学びを綴ります。

略歴・資格

  • 2008年 埼玉医療センター麻酔科
  • 2014年 NTT東日本関東病院 ペインクリニック科
  • 2016年 静清リハビリテーション病院
  • 2019年 三島総合病院 ペインクリニック科 医長
  • ペインクリニック専門医 / 厚生労働省 麻酔科標榜医 / 健康スポーツ医

専門・研究

超音波ガイド下治療やVR治療の最前線で活動し、多くの学会(日本整形超音波学会、日本ペインクリニック学会、日本VR医学会等)でシンポジストや基調講演を務める。

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